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Last updated: May. 11, 2012

◆◆ 研究活動の流れ ◆◆

研究の流れ

【実験】

①測定準備

まずは測定をするために必要な試料を準備します。試料は自分たちで合成することもありますが、基本的に他の研究グループからもらうことが多いです。 次に試料の比熱や磁化を測定するための小型の測定器具を準備します。 測定する試料の大きさや特性を考慮して、場合によっては工作などを行い、自分で測定器具を作ることもあります。 準備した試料を測定器具に接着剤を用いて張りつけ、測定器具ごと冷凍機に取りつけます。

②冷却

測定器具を取りつけた冷凍機を液体ヘリウムの入った容器(デュワー)の中に沈めます。しばらくすると試料が冷やされ 4.2 K になります。 その後、液体ヘリウムをポンプを用いて気化させる(気化熱を奪う)という方法でさらに低温(0.3 K ~ 0.05 K)まで試料や測定器具を冷却します。 この作業におよそ1~2日かかりますが、無事冷えてしまえばこっちのものです。

③測定

試料が冷えたら測定を開始します。磁場が必要な場合は、デュワーの中に入っている超伝導線でできたコイルに電流を流して磁場をかけます。 “最強の永久磁石”であるネオジム磁石の10倍以上の大きな磁場をかけることもあります。 装置の制御はパソコン上のプログラム(LabVIEW)で行います。 24時間自動測定可能なプログラムは既に備わっていますが、必要に応じてプログラムを自分で改良・作成することもあります。 磁化測定であれば測定器具の電極間の静電容量(キャパシタンス)を、比熱測定であれば加熱時の試料の温度変化をそれぞれ読み取っていきます。 こうして磁化や比熱の温度、磁場、磁場方向依存性を測定していきます。

実際に用いている実験装置はこちら

研究の写真
左図: キャパシタンス式磁化測定用の器具(試料が乗った状態) 中央図: 比熱測定のプログラム 右図: 研究会の様子

【解析・解釈】

データが出たら、物理的に何が起こっているのかを定性的・定量的に解釈します。 例えば何か相転移が起こっているのであれば比熱や磁化の温度依存性には明瞭なピークや折れ曲がりが現れるはずです。 試料に混入した不純物が起こしている可能性はないか、原子核が持つスピンに由来する異常が現れている可能性はないかといろいろ検証します。 理論家によって有力なモデルが提唱されている場合には、自分でmathematica等を使って数値シミュレーションを行い、実験結果と比較することもあります。 よく分からないときは先生や周りの人と議論してみましょう


【発表】

実験結果がまとまったら公の場で発表します。榊原研究室では対外発表を積極的に行っています。まず年に二回「日本物理学会」があります。 さらに研究会や物性研究所内での発表の機会もあります。場合によっては海外で国際会議に参加することもあるかもしれません。 発表を重ねることで培ったプレゼンテーション能力は将来どの分野に進んでも役に立つことでしょう。 また関連分野の研究者の人たちと議論を重ねた結果、今後に必要な実験や今まで思いつかなかった新しい解釈、新しい試料の提供など得られることがたくさんあります。


【まとめ】

最後に、修士課程二年間の成果を修士論文としてまとめます。全体の流れを考えたり、見やすい図を作ったり、文章を練ったり、解析・解釈を重ねたりと大変な点もありますが、 その分完成した時の喜びはひとしおです。場合によっては先生と相談して学術雑誌に論文を投稿します。 修士課程の2年間は終わってみればあっという間です。 もっと研究がしたいという方は、博士後期課程に進学して研究を極めましょう!


研究期間

【その他】

授業

榊原研究室の学生は東京大学理学系研究科に所属します。そこで東大の授業を受けることになりますが、5コマ(10単位)をだいたい前期のうちに取得します。 本郷キャンパスに週1~2回通って理学系研究科の本格的な物性物理学の講義を受ける場合もあれば、柏キャンパスで実験と直結した実践的な講義を受けることもあります。 修士論文作成に向けて実験に集中できるよう、単位は早めに集めておきましょう。
(※こちらの情報はあくまで参考程度に。各自で責任を持って必要単位を取得してください。)

輪読・セミナー

研究を進めるにあたって自分の専門分野について深く知る必要があります。そこで榊原研究室では他の研究室のメンバーと一緒に週に一回、物性物理学・低温物理学関連の教科書を読み進めていきます。 何ヶ月かに一回、自分がチューターとなって教科書の内容をみんなの前で紹介する機会があります。 加えて、学生やスタッフの人たちが自分の研究内容を紹介するセミナーも定期的に開かれます。自分の関連分野の最先端に触れる絶好の機会です。


◆◆ 輪読で用いた教科書 ◆◆

2012年度
守谷亨「磁性物理学」(朝倉書店)
2011年度
Frank Pobell "Matter and Methods at Low Temperatures" (Springer)
2010年度
安達健五「化合物磁性 遍歴電子系」(裳華房)
2009年度
斯波弘行「個体の電子論」(丸善)
2008年度
Michael Tinkham "Introduction to Superconductivity(second edition)" (Dover Publications)