三田村裕幸の部屋
 
 

★出願中の特許の国際調査報告(予備審査に相当)で新規性・進歩性・産業上の利用可能性が認められました。

(2017年05月31日)

★数値位相検波におけるノイズ除去技術に関して国際特許を出願しました。

(2017年03月09日)

★日本物理学会誌12月号に記事が掲載されました。BUTSURI 71 (2016) 857-858.

(2016年12月05日)

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★HPを開設しました。

(2011年02月14日)

What’s New!

Scientific Topics

 3つのスピンが正三角形の頂点に配置した状態で反強磁性相互作用が働くと、三角形の3つの頂点の間でその作用は三つ巴に拮抗し、最終的には互いに120度だけ傾いた方向を向いている状態(120度スピン構造)が安定になります(図1(a)-(b))。このときスピンが面内容易性を持つならば、磁性イオンを右回りに順に数えるとスピンが「右回り」になる場合と「左回り」になる場合の2通りの状態ができます。この違いは「スピンカイラリティ」と呼ばれており、スピンフラストレーションの分野では古くから重要な概念の一つです。(一方で、らせん磁性体におけるスピンの右回り・左回りの違いは「スピンヘリシティ」と呼んで区別しています(図1(c)-(d))。)正三角形を辺共有で敷き詰めた格子(完全三角格子)においてもやはり隣同士のスピンが120度だけ傾いた状態が安定で、このときも2通りの状態(図1(e)-(f))ができることが予想されていてその違いもやはりスピンカイラリティと呼んでいます。しかしながら、この2通りの状態の違いを実際の物質において巨視的に観測することは、本学大学院理学研究科の宮下精二先生らによって理論が提唱されてから約30年もの間実現されていない未解決問題でした。

 我々は、RbFe(MoO4)2という物質を用いて三角格子の120°スピン構造におけるスピンカイラリティの巨視的観測に初めて成功しました。また、磁場中でのスピンカイラリティの振る舞いは大阪大学の川村光先生らによって同じく30年ほど前に計算されましたが、我々の研究結果はこの理論予測を実験的に初めて裏付けたものです。

 本研究成果は、横浜国立大学大学院工学研究院の綿貫竜太特別研究教員および小野崎紀道氏、天羽祐太氏、鈴木和也教授、山本勲教授、日本原子力研究開発機構量子ビーム応用センターの金子耕士研究副主幹、本研究所の橘高俊一郎助教、志村恭通研究員、小林理気研究員(現琉球大学大学院理学研究科助教)、榊原俊郎教授、米国オークリッジ国立研究所のSongxue Chi博士らとの共同研究によるものです。つづきを読む...

図1 スピンカイラリティとスピンヘリシティ

実家の床。シャストリー=サザーランド格子に見える。