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Last updated: Apr. 14, 2010

◆◆ PrPb3の反強四重極転移 ◆◆

高対称な結晶中にある磁性イオンの結晶場基底準位に軌道縮退が残る場合があります。 4f電子では強いスピン・軌道相互作用のために全角運動量Jによって状態が指定されるため、 軌道縮退は四重極モーメントの自由度として記述されます。 従って磁性体におけるスピン(磁気モーメント)整列と同様、四重極モーメントの整列現象、すなわち四重極転移が起こり得ます。磁 気転移と同様、四重極モーメントの配列が一様な場合を強四重極転移、交替的なものを反強四重極転移と呼びます。 四重極転移の研究は磁気転移に比べて歴史が浅く、未解明の部分も多いため近年盛んに研究され始めています。


立方晶化合物PrPb3では3価のPrイオン(4f2)は結晶場基底状態に軌道縮退を持ちます。 この物質は0.4 Kで相転移を示しますが、 磁気モーメントやマクロな格子歪みが発生しないことなどからこの転移は反強四重極転移と考えられています。 この物質の磁化温度変化を調べると、図のように四重極転移温度TQ以下で磁化の増大が見られます。


2000年6月のTopics図1

この磁化の振舞いを様々な磁場で測定して得た磁場-温度相図が次の図です。 四重極転移温度が磁場とともに顕著に増大している点が特徴です。 このような転移温度の磁場による増大は反強四重極転移系にかなり広く認められる現象であることがわかってきました。


2000年6月のTopics図2

この転移温度増大の機構は、 反強四重極相において磁場誘起される反強磁性モーメント間の磁気相互作用によるものであることが解析の結果わかりました。 反強四重極相で磁場誘起されるモーメントとしては、 磁気八重極が重要な役割を果たす場合があることも最近の研究からわかっています。


参考文献

T. Tayama et al.: J. Phys. Soc. Jpn. 70 (2001) 248-258.