CeCu2Si2の超伝導ギャップ構造と磁場中対破壊効果

2014年にPhys. Rev. Lett.誌に掲載された論文[1]でd波超伝導体の有力候補CeCu2Si2が予想に反してフルギャップ伝導体であること、および磁場中で比熱と磁化に異常を伴う対破壊効果が起きていることを報告しました。こうしたCeCu2Si2の超伝導をより深く理解するために極低温比熱・磁化の温度・磁場・磁場方位依存性を詳しく調べた結果、比熱と磁化の磁場中異常はいずれの磁場方位でも熱力学的関係式を満たしながら低温高磁場領域で発現していることを確認し、超伝導状態の異常であることを明確にしました。また超伝導ギャップ構造に関して、ab面とac面のいずれの回転磁場中でもギャップ異方性を示唆する比熱異常は観測されず、超伝導ギャップにノードがないことを支持する結果を新たに報告しました。これまでCeCu2Si2ではゼロ磁場における比熱と核磁気緩和率1/T1が温度のべき乗に比例してみえることからギャップにラインノードを持つ超伝導が有力視されてきましたが、多バンド模型を用いればフルギャップでも実験結果を比較的良く再現できることを示しました(図1)。

2016年8月のTopicsの図1
図1 : 多バンドフルギャップ模型を用いて計算した比熱と核磁気緩和率1/T1の温度依存性(線)。丸印はCeCu2Si2の測定結果[1,2]。

本研究成果をまとめた論文はPhysical Review B誌に掲載されました

※ 本研究は、マックスプランク研究所(ドイツ)、ザルツブルク大学(オーストリア)、立命館大学との共同研究です。



[1] S. Kittaka et al., Phys. Rev. Lett. 112, 067002 (2014).

[2] K. Ishida et al., Phys. Rev. Lett. 82, 5353 (1999).



論文情報

Thermodynamic study of gap structure and pair-breaking effect by magnetic field in the heavy-fermion superconductor CeCu2Si2
Shunichiro Kittaka, Yuya Aoki, Yasuyuki Shimura, Toshiro Sakakibara, Silvia Seiro, Christoph Geibel, Frank Steglich, Yasumasa Tsutsumi, Hiroaki Ikeda, and Kazushige Machida
(preprint: arXiv:1608.00680)