当研究室では重い電子化合物や四重極転移系などの、低い特性温度を持つ強相関電子系物質の磁性を研究しています。fイオンを含む金属化合物では殆ど局在したf電子と結晶中を自由に動きまわる伝導電子との混成効果のために、実に多彩な磁気・伝導現象を示します。混成効果はf電子のスピン・軌道間の相互作用をもたらし磁気転移や軌道整列(四重極転移)を引き起こす一方で、近藤効果によって局在モーメントを消失させる働きもあります。これら相反する作用の結果、・重い電子状態と呼ばれる電子有効質量の極めて大きい常磁性金属状態、・非s波超伝導、・多様な磁気転移四重極転移、などが現れ
ます。

これらの現象の多くは1K以下の極低温で現れるため、低温実験が欠かせません。当研究室では独自に開発した極低温磁化測定装置を主体にこれらの研究を行っています。この装置は20mK以下の温度領域15Tまでの磁場スキャンによる精密磁化測定が行えるのが売り物です。

実際にどのような研究を行っているか、またどのような測定が可能か、については以下の例をご参照ください。

 

○ Modulated Quadrupole Ordering in PrPb3

○ 回転磁場下の比熱測定による異方的超伝導体のギャップ対称性の研究
English [Field-Angle Dependent Specific Heat of the Anisotropic Heavy-Fermion Superconductor CeCoIn5]

○ スクッテルダイトPrOs4Sb12の超伝導転移と磁場誘起秩序転移

○ スピンアイス化合物Dy2Ti2O7における気相・液相型転移

○ 重い電子系物質 CeCoIn5 の異方的超伝導

27Alの核スピン磁化のキュリ−常磁性

○ PrPb3の反強四重極転移

○ トリプレット超伝導体UPt3の異方的常磁性効果

○ 重い電子系物質CeRu2Si2のメタ磁性

 

これらのf電子化合物系以外にも、低い特性温度を持つ強相関物質を幅広く研究対象としていきます。