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メタ磁性という言葉は元来、異方性の大きい反強磁性体が磁場中でスピン反転するときに生じる磁化曲線の階段的構造に使われていましたが、最近では常磁性金属の磁化がある磁場を境に急激に増大する現象に用いられることが多くなりました。常磁性金属におけるメタ磁性の機構は自明ではなく、さまざまな議論がされています。ここに示すCeRu2Si2は常磁性の重い電子化合物ですが、図のように7.6T付近にてメタ磁性を示します。このメタ磁性の機構はまだ完全には確立していませんが、重い準粒子の状態密度や磁気的相互作用の磁場変化などが原因であると考えられています。 この物質のメタ磁性の1つの問題点は、メタ磁性に伴う電子状態の変化です。ドハース・ファンアルフェン効果の実験からはメタ磁性臨界磁場において準粒子フェルミ面の不連続的収縮を示す信号の変化が見られ、あたかもf電子がメタ磁性を境に低磁場側の遍歴状態から高磁場側では局在状態に転移しているかのような振舞いを示します。このような転移が実際に起きているとすれば磁化曲線にも不連続的な飛びが期待されます。この場合、メタ磁性はある温度以下で1次転移となるはずです。この点を調べたのが上図の実験です。 磁化曲線は低温で激しく温度変化を示しますが、0.5K以下では落ち着き、温度を90mKまで下げても磁化曲線はなめらかなままで不連続やヒステリシスは現れません。これは1次転移が無いことを示唆します。この熱力学量の連続性と、ドハース・ファンアルフェン効果の不連続な信号変化とをどのように結びつけて説明するかはまだ未解決の問題です。 参考文献
○ Modulated Quadrupole Ordering in PrPb3 ○
回転磁場下の比熱測定による異方的超伝導体のギャップ対称性の研究 ○ スクッテルダイトPrOs4Sb12の超伝導転移と磁場誘起秩序転移 ○ スピンアイス化合物Dy2Ti2O7における気相・液相型転移
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