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第二種超伝導体に零磁場から磁場を加えていくと、磁場を完全に遮蔽したマイスナー状態から磁束が超伝導内部に侵入した混合状態へ移り変わります。さらに磁場を増やしていくと超伝導の部分は減っていき、ついには完全に消失します。この磁場を上部臨界磁場といい、通常Hc2で書き表します。 混合状態の磁化曲線は、超伝導部分による反磁性と常伝導部分による磁化の重ね合わせになります。通常、超伝導部分はHc2に向かって連続的に零になるため、Hc2で磁化曲線は折れることがあっても不連続になりません。相転移の分類で言えば、2次の相転移になります。 CeCoIn5は最近発見された重い電子系超伝導体で、現在のところ重い電子系の中で最も高い超伝導転移温度2.3Kを持ち、異方的超伝導体であることや量子臨界点近傍にあることが実験的にわかっています。 図にCeCoIn5の50mKでの磁化過程を示します。矢印で示したところがHc2です。興味深いことはHc2(Hc2a=116kOe, Hc2c=49kOe)でa軸、c軸ともに磁化の不連続な飛びを示すことです。この磁化の飛びは小さいですがヒステリシスを伴います。このことはHc2での相転移が2次ではなく1次であることを意味します。われわれの知っている限りでは、Hc2での1次相転移が確認されたのはこの系が初めてです。この1次相転移の起源については、1960年代の理論的に予測されたパウリ・リミットによる理論などありますが、まだ明らかになっていません。これ以外にもこの系は通常のピーク効果の温度・磁場依存性とは明らかに異なった異常なピーク効果を示します。この起源についてもまだ明らかになっておらず今後の課題です。 参考文献
○ Modulated Quadrupole Ordering in PrPb3 ○
回転磁場下の比熱測定による異方的超伝導体のギャップ対称性の研究 ○ スクッテルダイトPrOs4Sb12の超伝導転移と磁場誘起秩序転移 ○ スピンアイス化合物Dy2Ti2O7における気相・液相型転移
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