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Last updated: May. 11, 2012

◆◆ 研究テーマの例 ◆◆

量子力学に起因した新規な現象を観測するためには低温かつ高感度な測定が必要です。 そこで我々は主に 1 K を切るような温度条件のもと、自分たちで開発した磁化や比熱の装置を用いて測定を行っております。 特に100 mK以下の極低温領域における磁化測定技術と回転磁場中での比熱測定技術は他に類を見ないものです。 このような測定技術を生かして、電子が大きな有効質量を持つことから「重い電子系」と呼ばれる希土類(レアアース)を含む金属化合物や珍奇な超伝導体、特殊な結晶構造を持つ磁性体などを中心に測定を行っています。 例えば伝導電子の「重さ」は低温で巨大な電子比熱として実際に観測することが可能です。 以下に具体的な研究テーマを紹介します。

【異方的超伝導】

金属では、低温に冷やすとある温度で電気抵抗が厳密にゼロになる超伝導現象と言われるものが良く知られています。 超伝導は、従来の理論では2つの伝導電子が電子格子相互作用を介して等方的なエネルギーギャップのもと対形成して発現する(秩序化する)と理解されてきましたが、 特にここ20~30年間で従来とは異なるメカニズムで発現する超伝導が次々と発見されています。 従来の理論では、等方的な電子格子相互作用を反映して超伝導ギャップも等方的になると考えられてきましたが、 新しいタイプの超伝導では、従来とは異なる(等方的ではない)対形成メカニズムを反映して超伝導ギャップが異方的となり、 物質によっては特定の方向に運動する電子は超伝導になれない(特定の方向で超伝導ギャップがゼロになる)ことも分かってきました。 そのため、超伝導ギャップ構造の決定は対形成メカニズムに迫る上で欠かせない重要なテーマとなっています。 そこで我々は回転機構を取りつけた冷凍機を用いて、超伝導体に様々な方向から磁場を印加して比熱を測り、 比熱の磁場方向依存性から超伝導ギャップの異方性を実験的に明らかにすることを目指しています。 以下に回転磁場中比熱測定から超伝導ギャップ構造を明らかにしたこれまでの研究例を示します。

【 2012年2月 】 角度分解磁場中比熱測定から明らかにしたCeIrIn5の超伝導ギャップ構造

【 2010年1月 】 CeCoIn5の超伝導ギャップ構造


超伝導


【四極子秩序】

物質を冷やしていくとある温度で物質の性質がガラっと変化することがありますが、これを一般に相転移と呼びます。 例えば磁気相転移とは電子が持つ最小の磁石であるスピンがある温度で向きをそろえて整列する現象です。 一方でスピンではないものが整列する場合もあります。その一つに四極子モーメントという f 電子の電荷分布が整列する四極子秩序と呼ばれるものがあります。 磁石であるスピンが整列するわけではないので、磁化に現れる影響は小さく、温度も 2 K 以下であることが多いので キャパシタンス法による高感度な磁化測定が大きな力を発揮します。また四極子モーメントと伝導電子の波動関数が混成することで秩序を起こさない可能性も指摘されており、実験的検証が望まれています。
多極子


【メタ磁性を示す磁性体】

メタ磁性
磁性体に磁場を印加するとある磁場で磁気構造などが急激に変化することがあります。この時にメタ磁性と呼ばれる階段状の磁化の急激な上昇が起こります。 メタ磁性は低温ほど明確に観測され、磁化測定の醍醐味の一つです。メタ磁性の起源は様々で、単純な磁気秩序の崩壊から重い電子状態の変化、磁場で誘起される秩序の発現など多岐にわたり、 その物質の磁性を議論する上で重要な情報となります。以下にメタ磁性を示す様々な物質の研究例を示します。

CeRu2Si2における重い電子状態の変化

Dy2Ti2O7における磁気構造の変化

PrOs4Sb12における磁場誘起秩序



【その他】

これらの他にも様々な物理現象を対象に研究を行っています。興味のある方は、これまでの研究内容も参考にしてください。